目次
チャック・ベリーについての必要な変奏
同じ物語のもう一つの側面――ブライアン・ジョーンズ
ローリング・ストーンズの発明
1963-64年――ローリング・ストーンズの真の栄光
1965年――Satisfaction「サティスファクション」
1966-68年――ブライアン・ジョーンズ、頂点と衰退
水と鉄と火の死者たち
1970-75年――メイン・ストリートのならず者
最後のらせん――ローリング・ストーンズ・アドリブ
内容説明
本書について 國分俊宏(訳者)
『工場の出口』や『ビュゾンの犯罪』などのパリ郊外を描いた作品で高い評価を得ている現代フランス文学屈指の硬派作家フランソワ・ボンが、10年の歳月をかけて書き上げたローリング・ストーンズの物語、それが本書である。 少年時代からストーンズを追いかけてきたという著者は、その独特の息遣いを持つ文章で、原書で約700ページという圧倒的なヴォリュームの、緻密で雄大な物語を編んでみせた。 メンバーや周辺の人々の発言をくまなく拾い上げながら、それに安易に寄りかかることなく、これまで刊行された様々な伝記や雑誌記事などをいちいち突き合わせて、出来る限り正確な彼らの道程を描き出そうとするボンの狙いは、何よりもまず、伝説や神話に彩られたストーンズの姿を、「脱神話化」することにある。デビュー以前のまだ「ローリン・ストーンズ」だった頃の彼らについて200ページ以上を費やしているのもそのためだ。 全体として90年代初期までのバンドの歴史を記述しているが、本の主眼は、やはり60-70年代に置かれている。そのとき西洋世界で起きた変化がなんだったのか、そしてその大きな変化の、ストーンズもまた一つのシンボルに過ぎなかったのではないのか、そういう思いが、本書の基本姿勢となっている。 ストーンズについて書かれた本は数多い。だがそのどれもが、メンバーたちの意向に忠実に沿ったものか、あるいは彼らの輪の中にいた人物の一つの視点からの証言か、そうでなければ単なる写真集かインタビューの寄せ集めといったものだった。外部の人間が、何十年にも及ぶ執念深いファンとしての観察を基にしながら、様々な記録を重ね合わせてその歴史を一貫して大部にわたり記述しようとした本は、英語圏でさえこれまで存在していない。しかもボンは、「厳密な伝記」を目指しながら、小説家としての自らの領土も守り抜いている。 ここにあるのは、伝記と小説、あるいは音楽と文学が融合した、驚くべき力業の結晶だ。