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非常にユニークで、かつ面白い。小林古代史の書物による〝伝道〟を。

 小林古代史が完結したことは非常に喜ばしく、小林氏は一つの山を登破したと言える。これからは、その登山道を整備すべく、次世代の歴史学者に対して、小林氏が用いた様々な史料の解題であるとか読み解くコツ・ノウハウをまとめた著書を刊行するとか、一般の読者層にも広く訴えるような読物による“伝道”や“啓蒙”にも力を入れるべきであろう。また、『記紀史学への挑戦』で言及された“赤と白の攻防”という視点も非常に面白い。その視点から見つめた日本通史であるとか、小林古代史を1冊に平易にまとめたダイジェスト版などが、今後刊行されていくことを期待したい。
 このような事を強調する理由として、ご存知かもしれないが、中丸薫著『古代天皇家と日本正史』(徳間書店、2004年)の問題がある。非公式な小林古代史のダイジェスト版であり、はっきり言って盗作である。しかし、私はこの本に感謝もしている。この本がなければ、私が小林古代史を知ることは一生無かっただろうと断言できる。体裁や筆致は読みやすいように工夫されており、ダイジェスト版としての出来はかなり良いのである。今後も学究活動が重要であることは勿論だが、小林古代史が一応の完結を見た今、本格的に“反転攻勢”に打って出ても良いのではないか。小林氏の年齢を考えれば、残り時間が潤沢にあるとは言えないだろう。どんな知見でも、最終的には人に読まれてナンボです。 小林氏自身の学者としての立場や性格的な部分で気が進まないのであれば、小林氏監修のもと、誰か文筆家の人にダイジェスト版や小説版を著してもらうことを考えても良いのではないか。いづれにせよ、小林古代史はもはやそういう段階に入っていると私には見える。

 古今東(西)の史料を渉猟玩味して緻密に構築された小林史観は、非常にユニークで、かつ面白い。しかし、学術書の体裁で書かれているので、読みにくいことは否めない。また、古代史シリーズとして刊行しているにもかかわらず、現代思潮社でのシリーズでは結局小林古代史が完結しない、というのも、読者としてはいささかの不満は残るであろう。個人的印象では、祥伝社における小林古代史は、当シリーズよりもかみ砕いた説明であるとか、図や写真の充実、レイアウトの工夫などもあってか、相当読みやすく感じる。当シリーズと祥伝社の2冊(+3冊)とは、それぞれ小林古代史の一部であるが、その体裁と筆致は別物である。できれば、内容の重複は怖れずに、当シリーズでの体裁と筆致を踏襲して、小林古代史の完結(応天門の変のあたり?)まで刊行していただきたいと思う。それが小林古代史の“スタンダード”となるであろう。祥伝社からは、“スタンダード”を基にして、かみ砕いた説明や図・写真などで読みやすくしたものを刊行し、小林古代史の周知を促進するという風に、役割分担すれば良いのではないかと思われる。いずれにせよ、“スタンダード”は“スタンダード”として完結させて欲しい。そして、小林古代史が一応の完結を見た今こそ精確さに配慮しつつ一般読者層に広く訴える読物による“伝道”を本格化すべきである。
                                                              N.T.(25歳・学生)

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