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お知らせ(大島渚著作集)

第一巻 わが怒り、わが悲しみ   

第二巻 敗者は映像をもたず  好評発売中!


                     9月21日 毎日新聞

 


大島渚著作集 全四巻

この著作集は、映画監督である大島渚の半世紀以上にわたる著述のなかから、四つの主題の系列を選び、四巻に再録編集したものである。

第一巻 わが怒り、わが悲しみ            第一回配本 2008年10月

著者の自伝的な文章を軸として編み、その初期における達成点ともいうべき脚本『深海魚群』を収録。

第二巻 敗者は映像をもたず             第二回配本 2008年11月

著者のドキュメンタリー映画体験から導き出されたこのテーゼを中心に、映像と歴史、映画と政治の関係をめぐって執筆された文章を収録。

第三巻 わが映画を解体する             第三回配本 2009年1月

松竹時代から『御法度』まで、著者が監督したフィルムについての自註的文章を収める。東映のヤクザ映画『日本の黒幕』の幻の脚本を初公開。

第四巻 敵たちよ、同志たちよ             第四回配本 2009年3月

内田吐夢から若松孝二、足立正生、ゴダールにいたる、同時代の映画監督についての論考を収め、さらに幻の大作『ハリウッド・ゼン』の脚本を本邦初公開。

◆各巻に四方田犬彦解説。ゲスト解説としてローランド・ドメーニグ、宮田仁、マリア・ロベルタ・ノヴィエッリ、宮尾大輔が執筆。
◆各巻に大島渚の写真一葉を口絵として付す。
◆各巻予価 2800〜3600円(税別)
◆体裁 四六判上製本 280〜340頁

案内パンフのPDFはこちら osima1.pdf osima2.pdf


 

大島渚著作集のために                              四方田犬彦

イタリアのパゾリーニ、ドイツのファスビンダー、そして日本の大島渚。かつてファシズムの盟友として枢軸を構成した国々は、第二次大戦での敗北の後に、他に例を見ない映画監督を生み出した。彼らはともに、父親の世代が行った罪障をそのまま隠蔽して繁栄を続ける祖国を告発し、スクリーンを死者のための服喪の空間に変えた。おのずから彼らは孤立を強いられ、大手の映画会社から追放された。だが世界の映画史にあって彼らは、永遠に妥協せざる人々として、栄光の星座を形作っている。
 大島渚は戦後の、いや二十世紀の日本映画においてもっとも重要な映画監督である。その作品は毀誉褒貶に満ち、その行動のことごとくが公序良俗を乱すスキャンダルであった。彼は日本社会と日本映画をめぐる偉大なる罵倒家であるとともに、芸術の契機としてのエロスと暴力の擁護者であった。大島は『日本の夜と霧』で前衛党の偽善が置去りにした死者について告発し、『絞死刑』で在日朝鮮人青年の国家への対決を語った。『愛のコリーダ』では生と死の境界にあって光り輝くセックスの美しさを描き、猥褻で何が悪いのかと権力を弾劾した。その二四本に及ぶ映画作品は、喧騒と混沌、革命への期待、そして欲望の突然の噴出に満ちている。
 その輝かしい業績にもかかわらず、大島は巨匠の神話を拒み、ノスタルジアの思想を排して、今なお屹立する直接性としてわれわれの前に立っている。ここに彼の莫大な著作のなかから四巻の文選が編まれる。映像の政治について、他者の表象とその道徳について、そして何よりも自作の批判について、読者はここに偉大なる批判者としての大島渚を発見することであろう。

 


吉増剛造   (大島、……)渚のフィルムの光と力

(大島、……)渚のフィルムの光と力、――1~2ミリ。小枝が、フィルム=物の基底を打ち砕いた。(大島、…)渚のフィルムの光と力、―― これがなかったら「時代」などなきにひとしかった、なきにひとしかった。『少年』よ。『白昼の通り魔』よ。『コリーダ』よ。(大島、……)渚のフィルムの光と力、――の、アンドロメダ衝突は、(大島、……)渚のフィルムの光と力は、おそらく、ひとつの、奇蹟であった。その「奇蹟」の砂地に、いまひと枝が、残る。光の枝が、――。

坂本龍一   日本人はもういなくなった

このところ、日本人の話す姿を見るにつけ「日本人はこんな言葉をしゃべっていなかった」という思いを強くする。若者だけじゃない。老いも若きもだ。そんな時、無性に大島さんの『日本青春残酷物語』や『新宿泥棒日記』を見たくなる。なんて美しく輝いていたんだろう。ぼくは今まで昔を懐かしむことなんて、一番最低なことだと思って生きてきたけど、最近は何が悪いんだろうって思うことがある。大島さんが描いた日本人はもういなくなった。

北野  武    映画監督をやりたいと思った最初

大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』でラロトンガ島に行った時の話なんだけど、監督がトカゲが岩の上を走るというカットを撮りたいというんで、トカゲを置いて、「ヨーイ、スタート」って何度やってもうまくいかない。でもって大島監督はトカゲに向かって「何でできないんだ。ちゃんとやれ!」って本気で怒鳴っているの。その姿がコントみたいでとても可笑しかった。今思えば、あの時が自分が映画監督をやりたいと思った最初かもしれない。


 

 

各巻目次 

第一巻 わが怒り、わが悲しみ

京という鋳型
悲しみの街を歩く
Kyoto, My Mother’s Place
京都大学時代の回想
政治的転向について
『我が青春に悔なし』
わが青春残酷物語
日本映画の曲り角
戦後日本映画の状況と主体
脚本『深海魚群』
 解説 四方田犬彦
 ゲスト解説 ローランド・ドメーニグ

第二巻 敗者は映像をもたず

明後日の作家から―主として批評家に
「眠れる獅子―松竹大船」を批判する
絶えざる自己否定の上に―新しい作家の態度
〝ヌーベルバーグ"撲滅論
過渡期の日本映画とわれわれの立場
金嬉老と私たちの八八時間
『松川事件』とその周辺の問題
方法だけを論ずる者は頽廃する
〝私的”創造行為への侵害
私にとって記録とは何か
韓国 国土は引き裂かれたが
テレビの出現
映像と現実のバングラデシュ
人はなぜ外国映画を日本映画より
敗者は映像を持たない
東宝争議への疑問
映画にとって戦争とは何か 田坂具隆
日本映画の描いた戦争 
 解説 四方田犬彦
 ゲスト解説 宮田仁

第三巻 わが映画を解体する

『日本の夜と霧』虐殺に抗議する
太陽の墓場
疑問に答える
明後日の作家への手紙
自由への道
魔の思想と運動の思想
『忍者武芸帳』製作メモ
『日本春歌考』へ
『日本春歌考』に参加する諸君へ
『無理心中・日本の夏』へ参加する諸君へ
『絞死刑』について
『新宿泥棒日記』のシナリオについて
困難な時代における我々の作業
感度が鈍いことは罪悪である
状況と運動のなかで
残る問題ひとつ
『少年』おぼえ書
七〇年代をどう死ぬか
『夏の妹』について
『愛のコリーダ』最終陳述
体験的ポルノ論
『愛の亡霊』と日本の自然
『御法度』インタヴュー
『戦場のメリークリスマス』を語る
『マックス、モンアムール』インタビュー
脚本『日本の黒幕』 大島渚・内藤誠共作
 解説 四方田犬彦
 初めに性があった マリア・ロベルタ・ノヴィエッリ

第四巻 敵たちよ、同志たちよ

映画体験
内田吐夢
それは突破口か? ―日本映画の近代主義者たち
政治オンチ克服の軌跡=三島由紀夫
差別と殺戮=若松孝二
闘争と脱落=小川紳介
『仁義なき戦い』=深作欣二
足立正生〈永久運動者の美貌〉
戸浦六宏
最期の日々=寺山修司
独創的な、影一族のキャラクター=白土三平
解体と噴出=ゴダール
ゴダール/三島由紀夫
零からの出発
友よ―東松照明
弔辞―田村孟
『ハリウッド・ゼン』はなぜ実現できなかったか
脚本『ハリウッド・ゼン』
       大島渚・ポール・マイヤーズバーグ共作
 解説 四方田犬彦
 『ハリウッド・ゼン』解説 宮尾大輔
 フィルモグラフィー

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